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母 貝 育 成

業務背景

   人工採苗で生産した貝(25年間・約4億5千万貝)の「育成データベース」を開発した経験を基に、自社オリジナルの分析

 技術として、新たに「先天的な遺伝要素」(遺伝形質に起因する情報)と「後天的な外因要素」(異常気象・手入作業ミス・移

 動減耗)分離、健全な母貝「系統作出」と「維持保存」の為の「基本情報」となる「分析評価」手法を構築しています。

〇近年の夏場における種苗貝の大量斃死について

※「大量斃死」と「異常斃死」の概念は異なる

 「大量斃死」は通常はなだらかに減耗するが一度に大量に減耗した数量状態 

 「異常斃死」は比較対象要件により以下の2点に分かれる

      :「同一貝種」時系列(過去)の比較 過去の生残率に比べ斃死率が異常に高い

      :「周辺貝種」時系列(現在)での比較 周辺の生残率に比べ斃死率が異常に高い

※「斃死要因」は(先天的要因)(後天的要因)で異なる

(先天的要因)近年の高水温期間の長期化に起因する「環境対応力」の不足が要因 採苗要件で天然と人工で異なる

 「天然貝」:「遺伝形質の変化」(自然界における人工貝との自然交雑などで変化)

 「人工貝」:「近交弱性」過度な選抜育種による種としての環境対応能力「幅」の狭小化 交配個体数の基本無視

     :「業績優先」タンク内での淘汰選抜(受精率・分割異常・成長異常)を軽視 販売時点の貝数を優先

(後天的要因)頻繁に斃死発生する場所:「区画漁業免許」設定時に比べ変動している可能性が高い

 「異常気象」(高水温・低水温・低比重・貧酸素:垂下層に至る高水温による貧酸素水塊形成)

 「人為的な操作ミス」(密植・付着物による収容器の通水阻害・過度な洗浄作業)要:高水温に対応する作業変化

※「採苗生産の3つの事業形態」 「種苗生産」は「養殖結果」と解離してはならない

 (実際のユーザーとして40年にわたり真珠生産に使用した結果と感想)

【自社水揚高の向上が目的】採苗精度(生残率など)が自社業績に直結

 「民間の一貫メーカー」種苗・養殖・加工・販売)は常に採苗に逃げ場の無い結果がフィードバックされる

      ・安定した事業成立を前提とした「計画生産」に伴う「系統管理」「継代保存」は必須の基本要件 

      事業規模が大きく成る程、事業成果に直結した採苗段階からの連携コントロールが必須  

【種苗の生産販売が目的】生産販売数量が自社業績に直結

 民間の種苗販売会社」は受注種苗を販売終了で自社事業が成立・販売先の養殖成果(業者責任)とは解離

      ・販売する種苗に系統は存在するが、「系統管理」は採卵母貝入手先まかせで、養殖データの連携は無

      ・購入する養殖業者の自己責任で系統貝種を選定するが、自社漁場特性とのマッチングは期待出来ない

【種苗の生産が目的】事業計画に基づく計画数量確保が優先

 「公的機関」は事業計画された配布(放流)数量達成で事業評価が成立・配布先の養殖成果(業者責任)とは解離

      ・地元養殖業者からの採卵母貝の入手が主で、系統・継代ともに養殖データの連携は無い

〇「真珠養殖における優良母貝とは?

①斃死率の低い貝​​​​​​​​​​​​​

​ ※斃死率(生残率)については、「母貝養殖」産業段階と「真珠養殖」産業段階がある

 「母貝養殖」:母貝(重量)で事業成立 目的:「大きな貝」を如何に効率良く(斃死なく)生産するか

      :功利優先で自然の生理メカニズムを軽視する傾向(採苗技術の進歩:陸上水槽内)外の育成漁場とのズレ

 「真珠産業」:真珠(重量・サイズ)で事業成立 目的:「大きな真珠」を如何に効率(斃死なく)良く生産するか

      :挿核施術後の斃死率増大 高水温ばかりではない使用母貝の弱体化(​抗ウイルス耐性を含む)

      :優良母貝  母貝生産段階で淘汰選別 核入れ後に減耗しない強い体質の貝で事業スタートは必須 

※ 厚巻きを期待して挿核用母貝を選抜育種 ⇒ 珠の巻き改善ではなく生残率向上(ポリキータ穿孔治癒貝として生残) 

 稚貝:温暖化に対抗する高水温耐性:近交弱性による弊害(選抜過多による生存バンドの狭小と均一化=大量斃死)​

   :先天的要因→人工採苗におけるの系統(交配:採苗個体数・継代:系統保存)が確立・後天的要因を排除

   :早期採卵→大珠志向から大きな貝のニーズが増大→「早期採卵」傾向(冬場の採卵母貝の成熟漁場を開拓)

採苗段階の徹底した淘汰育成(裾切=成長不良)⇒  当年物87% 越物74%の浜揚げ生残を経験

タンク内浮遊幼生時はメッシュによるフルイ淘汰が容易 VS 付着後は稚貝の剥離と手作業選別が必要でコスト高

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 成貝:殻の厚い貝:ポリキータ穿孔による斃死が少ない=真珠質分泌力が高く真珠層で穿孔キズを巻き込み治癒痕

選抜育種(真珠質の厚い貝を選抜して採卵)珠の巻きを期待 ⇒ 反して珠の巻きより生残率向上に大きく寄与

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穿孔性多毛類ポリキータ

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穿孔穴を真珠質で補修

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閉殻筋部は本来は致命傷

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治癒痕

​外套膜下がり(後退症)に対する生残率向上を目的とした人工採苗による「雑種強勢」

中国ハーフ:(感染症対策)⇒ 耐性は確認出来ない。単にバラツキがあるだけで全滅が無い(量産技術には不向き)

 中国アコヤは南北に広い分布:何処の貝か明確ではないと水温特性は確認出来ない

中東ハーフ:(高水温対策)⇒ 水温上昇時の斃死率に大差ない、外套膜下り発症時の10月早期浜揚げでも珠艶が有利

 真珠層の厚い貝殻の形質は、日本国内で垂直継代を重ねると徐々に無くなる(日本環境に順化?)純系の戻し交配が必要​​

②優良真珠の出現率が高い貝

 巻き:真珠質分泌量が多い:珠質=珠が厚く巻く 貝種別の評価:真珠質分泌量の数値化

    :使用核サイズの統一による真珠質分泌数量の数値化(巻厚ではなく、真珠質分泌体積総量の原核体積比増重%率 )

I20160201 真珠原核 MGP9882.JPG

使用原核サイズの統一

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出来た真珠の直径計測

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厚巻きの真珠

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原核に対する積層真珠質

   ※出来た真珠の真珠質分泌量を数値化、貝種毎にグレーディング、選抜育種の資料とする。(大サイズは巻かない✖)

 色目:唯一の遺伝形質である黄色色素の出現率が揃った貝 厚巻きは明度が低下 干渉色に必要な数値

 ※黄色色素測定時、特定の波長の光線を照射して、強調された反射光を測定する事で、検出数値を強調し選抜

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測定ウインドウ設定

曲面対応プログラム

B強調光源による黄色色素

黄色色素含有度合いの数値化

​ 細胞貝採卵時、貝殻の黄色色素含有度合いを色彩計により数値化、個別切出し法で採苗、作出した細胞貝を使用

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​上:白色系  下:金色系

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黄色色素の少ない系統

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黄色色素が多い系統

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左:白色系 右:金色系

③人為的な成長疎外を受けていない貝 (後天的要因)

 育成:適性数量(成長を見越した1篭当りの収容入数による密植防止)

        (特に殻体成長が著しい沖出し初期)

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小サイズ=粗密に付着

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成長に伴い密植傾向

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15㎜前後でほふく移動鈍化

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​密植を解決する為に分殖

「種苗貝の沖出し」 

 7月「極小種苗」を「極小網目」の篭で沖出し ⇒ 8月付着物で網目が目詰まりで通水阻害 ⇒ 28℃を越える高水温下の作業

   ・通水回復の為に網地の高圧洗浄:網替え:その際に網地内側に付着拡散した稚貝を「剥離」採取 

           ・付着物による収容器内の餌料環境の悪化=高水温時の酸素欠乏

​           ・摂餌時条件の良い篭内部壁へ拡散付着を防止:貝自らが通水阻害要因となる

台形篭試験写真資料1.bmp

​台形篭 40メッシュ

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シェルベース(柔かい)

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網篭内側壁面に拡散移動

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シェルベース 沖出し

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沖出し後10日

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   :付着拡散(成長に伴い殻体安定を求め、貝自らより硬い付着基盤を求め付着器上でほふく移動)

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成長に伴い不安定

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硬い枠金に移動

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シリコン防汚加工の経済性について

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稚貝育成における懸案事項

①沖出し篭網地の目詰まり対策(頻繁な高圧洗浄や外網替えで対応)

①分殖作業の省力化(人力による分殖作業 ⇒ 貝自らの移動拡散による作業省略  )

②生残歩留まり向上(高水温時の疲弊した稚貝に人力による強制剥離によるストレスを与えない)

③成長の効率化(成長した貝自ら移動拡散する為、稚貝の大きさが平均化)

④稚貝本体への付着物防御(網篭内部のフジツボ幼生の付着好適流速を人為的にコントロールが可能となり、付着困難)

 ※収容器の防汚だけではない、二次的な効果を考慮すると十分に費用対効果が見込めます。(篭自体の耐久性も増します。)

シリコン付着防止効果の活用

効果:種苗の成長に伴い 貝自らより硬い付着器を求め移動拡散する「嗜好」を助長 

        :高水温時(衰弱)の人手による剥離採取・分殖を不要 斃死対策と繁多時の省力化  

           ※  網篭の目詰まり防止(通水確保)だけでは無い

①沖出し篭網地への付着珪藻などによる目詰まり防御 = 通水確保 稚貝自体も網地内面に付着拡散すれば阻害要因

稚貝の成長に伴い、より安定した付着基盤を求め、自ら付着基質上をほふく移動拡散 = 人手による採取不要

③室内採苗器から全ての貝が育成用の分殖器へ移動、付着基盤上を成長した貝から移動(付着器を芯 ➡ 均一な摂餌環境)

④収容器内部への移動拡散が制限 分殖器を芯とした強制付着 貝自ら移動間隔を調整 移動完了した付着器を別篭に分殖

​⑤分殖時に篭内部に拡散付着した稚貝を剥離採取する必要が無い 夏場高水温時の衰弱種苗貝には致命傷となる時期がある

⑥挿核作業時期(繁忙期)と重なる稚貝育成必須の分殖作業からの解放 「分殖作業」が省略 ➡ 大幅な省力化

​網篭をシリコン塗料で防汚処理(網替え・洗浄・剥離採取 無し)

※採苗器を分殖器でサンドイッチしてシリコン防汚した収容器で沖出し ➡ 斃死軽減+大幅な省力化

採苗器(浮遊幼生の着底用付着器)➡ 敢えて柔らかく不安定な素材を使用 シェルベースなど

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70%遮光ネット

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シェルベース​(柔め=薄い)

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ブラックリーフ(硬め)

分殖器(付着幼生の移動先分殖器)➡ 成長 ➡ 貝自ら安定した硬い基質へ移動拡散を助長 ブラックリーフなど

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解した古ロープ

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シェルベース(硬め=厚い)

ブラックリーフ

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天然スギ葉

アコヤガイ(人工採苗種苗)の防汚沖出し台形篭 育成 フロー

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沖出し時

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成長した貝から移動分散

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​貝自ら等間隔に拡散

篭網防汚=網への付着防止

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付着器の使用が必須

付着器を芯として移動拡散

貝自ら立体的に移動拡散

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付着器無し 貝同士で集塊 成長阻害

貝自らの移動拡散で平均化

成長差により大小混在

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◎従来方法 防汚処理無し(網替え・洗浄・剥離採取)

篭の内側に付着拡散

網目の目詰まりによる通水阻害

付着環境差による​大少差が多きい

台形篭 無防汚 CIMG2346.JPG

網篭防汚無し=目詰まりが早い

金枠付着 CIMG2348.JPG

網篭内側への移動拡散

三竦みによる物理的成長阻害

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付着器ごと篭替え

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付着器から移動拡散

   :集塊防止(付着器を芯とした均一な環境により貝同士の付着による物理的な成長阻害を防止)

        (均一な付着環境による生産サイズの平均化)

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貝同士の付着による変形防止

​工事中

 抑制:抑制篭による抑制コントロール時の精度と効果の均一性

       抑制強度が均一に現れる為には貝が揃っている必要がある

④挿核に適した内部構造を有した貝

 挿核:核入れ空間の大きさを持つ貝 使用核サイズの均一性:適正核サイズの選定容易

   :閉殻筋サイズ 雑種強勢狙いの中東系(環境変化対応のため大型)と国産種との交雑は要注意​

 採苗:作出目標の内部構造を設定し、採卵時に個別剥身により選別、生殖巣切出し法により選抜採苗

    閉殻筋の適性サイズ

工事中

201305 挿核位置 IMGP1250.JPG
P1010017.JPG

工事中

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20130513 Baharin IMGP0543.JPG

工事中

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工事中

​「あこや稚貝の中間育成技術」省力化  平均化  斃死対策

※ 初期段階からサイズを揃える事により、貝自らの移動拡散嗜好の助長に繋がり、成長効率が高くなる。

〇中間育成時の付着物防御(付着器+収容器極細網目の防汚による好適付着流速コントロール)

フジツボ付着時の付着基盤選択性を活用した付着防御

「付着嗜好」付着生物の付着要因である「付着流速」と「基質表面」
①「付着流速」付着時期にあるフジツボ浮遊幼生が付着基盤に付着する際、好適付着流速が存在する。
②「基質表面」フジツボ、イガイ等の蛋白質由来の生物は付着基質表面の微生物フィルム形成が要件となる。
③「基質形状」
粘着ホヤ、複合ホヤ等は平滑性を好む付着嗜好が認められる。

「硬度=安定感」の異なる付着器と「防汚」収容器との組み合わせで、貝自らの移動拡散嗜好(成長に伴いより安定した付着基盤を求め移動拡散)助長し、6月~9月の水温上昇期及び高水温時期に重なる分殖作業=ストレスとなる剥離採集作業を不要とする事で、懸案の高水温時の中間育成稚貝の斃死リスクを大きく軽減、加えて分殖作業の「省力化=挿核作業と重なる繁忙期」、同一サイズの稚貝が自ら移動拡散=揃う事により、サイズ混在に比べ、高い生産効率が期待出来る。

収容器の網篭防汚処理➡通水長期確保➡収容網篭内面への移動拡散困難➡付着器を芯とした種苗貝の強制付着➡成長に伴い付着器上で自ら移動拡散➡7~9月の高水温時期の分殖操作を無くす事による斃死軽減+省力化+平均化

​シリコン養殖カゴ (内部生産物への防汚メカニズム)

左:防汚処理 (60日経過) 右:無処理

シリコン塗料で防汚した1分目PE△提灯篭  内部稚貝へのフジツボ付着は見られない

3分目△提灯 フジツボ付着

※昔から網目の細い△提灯篭は内部稚貝にフジツボの付着が少ない事が経験上解っていたが、細目合いの篭は目詰まりが早い為、頻繁な篭掃除が必須であった。付着物による目詰まり具合の人為的なコントロールは困難であった。

※稚貝育成時のフジツボ付着対策:細目合篭をシリコン防汚する事で、篭洗浄や篭替えをせずに、細目合篭のまま篭替えせずに長期的な収容器内部の人為的流速コントロールが可能となり、稚貝へのフジツボ付着防御が可能となった。

※要:成長後の適性数量を想定し、初期から篭入貝数を少なくする必要がある=種苗沖出し初夏は水温が急上昇し海水中の溶存酸素量が減少していくので、成長を見越した疎殖でのスタートは積極的な斃死低減に繋がる。

1分篭=フジツボの好適付着流速を阻害=フジツボが付き難い :付着物で目詰まりし易い(要:頻繁な篭網洗浄が必須)

3分篭=フジツボの好適付着流速を誘引=フジツボが付き易い:付着物で目図まりし難い(稚貝へのフジツボ付着は致命傷)

工事中

※ ​二枚貝幼生の(付着+移動+拡散)のメカニズム

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